建設技能者の賃上げを現場任せにしない仕組みづくりが動き出している。国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)処遇改善推進協議会を開き、標準労務費の定着に向けた官民連携を進める方針を確認した。
標準労務費は、工事費の中に技能者へ支払うべき賃金原資を適正に見込ませるための基準である。これまで建設業界では、受注競争の過程で労務費が削られ、下請け企業や現場の職人にしわ寄せが及ぶ構造が課題となってきた。資材価格や人件費が上昇する一方で、見積もりに十分反映できなければ、賃上げの原資は確保できない。
今回の協議では、元請け、下請け、発注者団体などが連携し、適正な労務費を見積もりや契約に反映させる商慣行の浸透が焦点となる。CCUSは技能者の資格や就業履歴を登録し、経験や能力に応じた処遇につなげる仕組みで、標準労務費と組み合わせることで、賃金水準の底上げを後押しする狙いがある。
建設業では高齢化と若手不足が深刻化しており、処遇改善は人材確保の前提条件になっている。価格を抑えるだけの発注や、労務費を削る安値受注が続けば、担い手不足はさらに進み、工事の遅れや地域インフラの維持にも影響しかねない。
制度を実効性あるものにできるかは、発注者側が適正価格を受け入れ、元請けから下請けまで賃金原資を確実に行き渡らせられるかにかかっている。標準労務費の定着は、単なる賃上げ策ではなく、建設業の取引慣行を見直す試金石となる。